NEWS LETTERハーブ通信
 vol.23 

2008年4月

 
今月は春爛漫の桜の中をウォーキングを、若草舎の強力助っ人のペンネーム“紫蘇野ゆかり”さんがお届けします。

 そして、花より団子、いいぇ、おいしい純米酒を造る蔵元訪問記もどうぞ。

お花見ウォーキング
by 紫蘇野 ゆかり

 日本中で毎年その開花を心待ちにされる‘さくら’ なんと幸せな花でしょう。

 私たち日本人がこんなにさくらの花を心待ちするのはなぜでしょうか。

 それは先ず、春を象徴する花であること。さくらが咲く頃はまだ冬の寒さが同居している時期です。でもさくらが咲けばその後は春本番となり、ぐっと暖かくなるという期待感があります。そして、日本の国花さくらは私たちの心を象徴する一つでもあります。又、満開のさくらは辺りをぱあーっと明るくし、気分まで明るくしてくれます。‘お花見’という形でその喜びを表現したくもなります。更に日本人はさくらのいさぎよい散り方に、自らの引き際、死に際もかくありたいという憧れがあるのだと思います。

 こんな理屈はさて置いても、ひと言でいえば‘はな’が咲くと心がウキウキするのです。今年はどこでお花見をしようか、と何百年も昔から人々は想いを巡らせてきたに違いありません。
 4月初め、私は今までとは少し違うお花見をしました。今年が節目の歳となるので、昨年から友人と構想を練って、小金井公園を源泉とする石神井川沿いを歩くお花見を兼ねた記念のロングウォーキングを実行しました。同い年の友人の他に、若草舍のメンバーも含む3人の同行の士を得て約14キロの道のりです。集合は朝10時に有楽町線の氷川台。駅の傍を流れている石神井川の橋の袂が出発点で、ここは練馬区です。

石神井川の両側にはソメイヨシノのりっぱな木が断続的に連なっています。その日は、開花から2週間近く経っていましたが、今春の寒さのお蔭でまだ満開に近く、花びらが少し散り始めたという状況でした。お天気にも恵まれ、やわらかい日差しを受けて歩くお花見は最高の気持ちよさです。“やっぱり私たちの行いがいいからよねー”なんて自我自賛しながら歩き始めました。

   
            シャッターポイント                                    花 筏    

 川は深く掘られ、コンクリートで護岸されているのでちょっと興ざめですが、古びて苔など生えているところもあり、川に覆いかぶさるように咲いているさくらはその岸壁に美しく映えています。水面には花筏ができていて風情を増しています。又、ムクドリ、カルガモ、キンクロ、コサギなど、東京でこんなに見ることができるのかと思うほど、多種の野鳥たちが水を求めてそこに来ています。しばらく歩き板橋区に入ると、ここぞシャッターポイントと思わせる橋があり、橋の上には町内会が用意したと見受けられる畳敷きのベンチまで置いてありました。すばらしい両岸のさくらをバックに私たちも記念写真を撮りました。

川沿いの道はさくらの木だけではなく、近辺の庭先を眺めていける道でもあります。様々な木々や草花を見つけては、その名前をお互いに尋ね、確かめ合いながらゆっくりとした足取りで歩みました。そして12時過ぎに第一の目的地、北区王子の飛鳥山公園前に着きました。第八代将軍徳川吉宗が、庶民がお花見を楽しめるようにと作った公園だそうで、さくらの木がたくさん植えられています。物見遊山でこの小高い公園に入ってみましたが、すでに大勢の花見客が地面を占拠していて足の踏み場がないような状態です。すぐに出て来てしまいました。

          

 近くのレストランで軽い昼食をとった後、隅田川の合流地点を目指し探しましたが、このあたりは街中で川は地下を通っているらしく見つかりません。次に見つけた時にはすでに大きな流れで、それはすでに合流した後の隅田川でした。川沿いをしばらく行き豊島橋を渡ると、少し先にお休み所としてはちょうど頃合いの広場があり、そこで休憩。腰を下ろしたすぐ傍には、満開のさくらの若木が私たちを待っていてくれたかのように咲き誇っています。ここをゴール地点とし、全員無事に完歩できたことを喜び、祝杯を上げました。

 このあたりでは隅田川のこちら側は足立区となり、練馬区を皮切りに板橋、北、足立と4つの区を東へ横断したことになります。今年のお花見は記憶に残る特別なものとなりました。

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純米酒だけを造る蔵元訪問記

3月のある日、埼玉県蓮田市にある純米酒だけを造っている神亀酒造さんを見学する機会に恵まれました。朝5時過ぎに着いた時は、あたりがまだ暗く静まり返っている中、蔵元だけが明るく、なんと3時から仕事をしているとのことでした。酒の仕込みを始める10月から3月末まではお正月も含め一日の休みもなく厳しい寒さの中、毎朝3時から酒造りをするそうです。酒の原料である酒米が蒸しあがるのを待って、専務の小川原さん(通称「専務さん」)が案内してくれました。 

きびきびと作業をする蔵人(酒造りをする職人)さん達の邪魔にならないように、いろいろな工程を見せていただきました。何基も並んでいる巨大なタンクには、熟成中の酒が貯蔵されていて、普通の純米酒は半年くらいで出荷されるのが一般的なのが、神亀酒造では3年熟成させてから瓶詰めにして出すのだそうです。だから旨みのある奥深い芳醇な味わいの酒が出来るのですね。 

一番印象に残ったのは、蔵人たちが釜から出した蒸米をある程度冷ましてから、大きな麻布に包み、肩に担いで全速力で階段を駆け上がり、2階にある麹室の広い台に置き、階段を駆け下りてはまた運ぶというのを繰り返し、その後台の上におかれた蒸米をもみ広げながら米の温度を計り、麹菌を植え付ける作業でした。麹室は30度くらいに温度調節されているうえ、麹菌の活動を活発にするためにたえず蒸米をもんだり広げたりする力のいる作業をしている蔵人さんたちは、上半身裸で玉の汗をかいていました。

     麹菌を植えつけているところ                          

麹室以外は寒い中での作業が続く温度差の激しい環境の中での過酷な仕事だそうですが、時折専務さんとのやりとりを聞くだけで、皆さん酒造りに情熱と愛情をもっているのが伝わってきます。

段階別にアルコール発酵が進んでいる様々なタンクも見ました。タンクに麹菌のついた蒸米を入れる作業では、床にこぼれた米をすかさず掃きとり、どこも塵ひとつなく清潔にしているのは雑菌が発生しないためだそうで、一連の素早い流れ作業にはただただ感心するばかりでした。 

最後に醪(もろみ)がゆっくりと絞られて、原酒が出てくるところでは、出来たての酒を試飲させていただきました。まだ荒くて強い、まさに生のままという感じ、でもこれから深みのある濃厚な酒になるだろうと予感できるような味わいでした。このときの酒を3年後に味わうことができたらどんなにいいでしょう!

              醪(もろみ)を絞って原酒がでてくるところ

神亀酒造は20年ほど前に日本で初めて自社の製造酒をすべて純米酒にした蔵元で、醸造用アルコールを添加した酒が主流だったその時代に、なかなか受け入れてもらえず、専務さんは大変な苦労をされたそうです。これはよそで聞いたことですが、地方の小規模の蔵元で純米酒造りに助けを求めてくると、まさに東奔西走で出かけて行き、親身になってアドバイスをしたり、尽力を惜しまないとか。それは個性の違った酒蔵がたくさんあったほうが、消費者へ多様なサービスを提供できるからとの専務さんの信念とのことだそうです。 

専務さんはシャイな方でぶっきらぼうな印象を受ける方ですが、酒造りは米作りからと、米農家と提携して無農薬の有機米にこだわり、頑固なまでに妥協を許さない酒造りが、旨い酒を醸すのでしょう。一方で、私たちが見学している時の写真を撮って、あとから送ってくださる、とても気配りの細やかな方です。 

専務さんは農業も自然の農法で安全な食材を作らなければ、今に日本の農業は駄目になってしまうと真剣に危惧していました。私たちも有機農法にこだわってハーブを栽培しているので、専務さんのおっしゃることはよくわかり、同じ思いを広げていかなくてはいけないと感じました。まだ働いている蔵人さんたちを差置いて、朝食までご馳走になり、酒造りだけでなく、さまざまなことを体験できた貴重な朝でした。 

日頃はワインを飲むことが多いのですが、純米酒のおいしさにも惹かれて、ますます飲食が楽しいこの頃です!

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